構造太郎です。
コンクリートは乾燥して収縮します。詳しく説明します。
コンクリートの乾燥収縮とは
乾燥収縮とは、硬化したコンクリート内部の水分蒸発による体積減少です。
コンクリートは、セメント・水・骨材で構成され、セメントと水の水和反応により硬化します。水和反応に必要な水量は、セメント重量の30%程度であるのに対し、スムーズな水和反応や施工時流動性確保の面から、40~60%となっているのか一般的です。この差の水分が余剰水となってコンクリート細孔内に残り、時間の経過とともに蒸発します。蒸発に伴う細孔内の表面張力(毛細管張力)の増大によって収縮(体積が減少)するメカニズムが乾燥収縮です。
乾燥収縮量と影響因子との関係
乾燥収縮量に影響を与える因子(材料・配合・断面・環境)と収縮量との関係を以下に整理します。
影響因子 | 乾燥収縮量 | |
小 | 大 | |
単位水量(配合) | 小 | 大 |
単位セメント量(配合) | 小 | 大 |
湿度(環境) | 高い | 低い |
骨材(材料) | 多い・硬い | 少ない・柔らかい |
骨材の吸水率(材料) | 小 | 大 |
躯体(断面) | 大きい | 小さい・薄い |
乾燥収縮が建物に及ぼす影響
乾燥収縮が何らかの要因に拘束されるとコンクリートに引張力が生じ、ひび割れに進展します。
この拘束は、コンクリート表面と内部との乾燥の程度が異なる内部拘束と、周囲部材との収縮量が異なる外部拘束とに分類されます。
内部拘束によって、コンクリート内部に圧縮力が、表面には引張力が作用します。この表面にひび割れが生じ、一般的には網目状の微細なひび割れとなります。
一方、外部拘束では、部材断面全体に引張力が働くことになるため、貫通ひび割れとなる可能性が高く、致命的な欠陥となる場合があります。
このように内部拘束・外部拘束に関わらず、ひび割れが生じてしまうと
- 建物としての美観の低下
- 劣化因子の侵入を容易とし、中性化や塩害を誘発(耐久性の低下)
- 部材としての剛性・強度の低下
を招きます。
乾燥収縮によるひび割れ防止対策
ひび割れを防止するためには、収縮量の低減を図ること、ひび割れの幅・位置を制御することが、とても重要です。
収縮量の低減を目的とした材料・配合、設計、施工面からの対策
<材料・配合>
- 減水剤などを使用し、単位水量を減らすこと
- セメントの種類によって収縮量が異なるため、収縮量が小さいセメントを採用すること
- 硬質な骨材を採用すること、吸水率が小さい骨材を採用すること
<設計・施工面>
- 部材が小さい・厚さが薄いほど、収縮量が大きくなるため、設計段階から部材断面形状に配慮すること
- 材令初期の急激な乾燥は、過大な収縮が生じるため、十分な湿潤養生、風・直射日光に対する養生、型枠残置期間の延長など施工面に配慮すること
ひび割れの幅・位置を制御することによる対策
乾燥収縮によってひび割れが生じたとしても、ひび割れの幅・位置を制御することで、コンクリートの健全性を確保できます。ひび割れ防止筋とか、ひび割れ誘発目地とか、よく聞きますよね。それです。
- ひび割れが予測される部位に補強筋を配置することで、ひび割れ幅を目標値まで制御することができます。
- ひび割れ誘発目地を適所に設置し、目地にひび割れを集中させることで、他の箇所にひび割れを発生させない制御方法もあります。
最後に
土木の分野では、コンクリートの乾燥収縮や温度応力対策として、膨張材を使用している事例もあるようです。建築分野では倉庫の床版コンクリートに使用していると聞いたこともあります。
膨張材の採用も1つの対策として覚えておきましょう。
費用対効果については??です。ごめんなさい。経験ある人はコメントお願いします。
以上、構造太郎でした。
コメント