アンカーボルトABRとABMとは

鉄骨造

構造太郎です。

アンカーボルトに広く採用されているABRとABM、あなたは説明できますか。

ABR/ABMの経緯

1995年に起きた阪神淡路大震災では、アンカーボルトのねじ部が破断してしまう事例が多くありました。

軸部が降伏して地震力を吸収する前に、ねじ部が破断に至ってしまった事例です。

これを受けて、アンカーボルトの伸び能力の有無が重要視されるようになりました。

伸び能力のあるアンカーボルトとは、軸部の全断面が十分塑性変形するまで、ねじ部が破断しないような性能を持つものと定義されています。

数式で表すと下式です。

$$\frac{降伏点}{引張強さ}<\frac{ねじ部の断面積}{軸部の断面積}$$

具体的には黄色本に記載があります。

  1. 切削ねじ(並目)の場合は降伏比が0.7程度以下
  2. 切削ねじ(細目)の場合は降伏比が0.75程度以下(ABMと同等)
  3. 転造ねじの場合は降伏比が0.75程度以下(ABRと同等)
  4. 降伏比(上記1~3)によらず、ねじ部の有効断面積が軸部と同等以上

ABR/ABMは、地震被害の教訓を生かした「伸び能力のあるアンカーボルト」として規格化されることになりました。

ABR/ABMの加工方法と特徴

ABRは転造ねじアンカーボルトです。

鋼棒を圧力で押しつけながら塑性変形によって、ねじ山と谷を作っていくものです。(転造加工)

一方、ABMは切削ねじアンカーボルトです。

鋼棒を機械で削って、ねじ山と谷を作っていくものです。(切削加工)

加工方法によって、特徴が異なります。

ABR(転造ねじ)はABM(切削ねじ)に比べて変形能力(靭性:粘り強さ)に優れます。

対してABM(切削ねじ)はABR(転造ねじ)に比べて、軸部断面積が大きい特徴があります。

最後に

破断強度までの変形能力(靭性:粘り強さ)が重要となってくる建物に対してはABRを用いるほうが良いでしょう。

アンカーボルトにせん断耐力を期待する場合や層間変形角を押さえたい(柱脚の回転剛性を上げたい)場合などは、軸部断面積が大きいABMを選択したほうがよいかもしれません。

設計を進めるにあたり、耐震性能を確保していくことを念頭においてアンカーボルトを選択していくことが重要ではないでしょうか。

ちなみにアンカーボルトは大きく構造用と建て方用とに分類されます。

今回は、構造用アンカーボルトについて説明しましたが、建て方用アンカーボルトについても理解しておきましょう。別の機会に説明しますね。

ABR/ABMについてもっと詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。

以上、構造太郎でした。

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